アフリカ豚熱で非常事態宣言 大統領令で豚肉輸入拡大へ
大統領がアフリカ豚熱で非常時事態を宣言。最低輸入枠を25万トンに引き上げ
ドゥテルテ大統領はアフリカ豚熱(ASF)の感染拡大を防ぐため、国内全域を対象に非常事態を宣言するとともに、豚肉製品の価格抑制のため、低関税による最低輸入枠(MAV=ミニマム・アクセス・ボリューム)を現行の5万4210トンから25万4210トンへと大幅に引き上げる大統領令に署名した。ロケ大統領報道官が11日、明らかにした。
非常事態を宣言した布告では、「ASFのさらなる拡大を抑制、豚肉製品の供給不足に対処し、小売価格を引き下げ、国内養豚業の復興を促進する」ことを目的に、政府と自治体に対し「緊急かつ適切な措置を適宜実施するため、必要な資源を動員して、全面的な支援と協力を行うことが奨励される」としている。
国や自治体は、迅速対応基金を含む各種基金の活用が可能になる。期間は1年間だが、状況により早期解除または延長の可能性もあるという。
MAVを引き上げた大統領令第133号では「消費者に適切で手頃な価格の食料を提供し、インフレを抑えるためには、輸入枠の変更が不可欠だ」と説明。MAV管理委員会に対し、輸入業者への割り当てが「公正かつオープン」であることを保証することも命じている。
ダール農務相は先週末、MAVの引き上げにより、輸入豚肉の価格が「23%下がることを期待している」と述べた。
▽上院の反発で妥協
MAVの量については、3月に大統領が40万4210トンに変更することを提案、議会に要請していた。しかし、多数の上院議員らが「裏庭養豚」をはじめとした国内中小零細養豚業者を苦しめることになると反発。承認が得られず、今回の大統領令では当初案の約6割に抑えられた。
関税率については、4月8日に署名された大統領令第128号で、MAV対象の関税率を従来の30%から5%(最初の3カ月)〜10%(その後9カ月)に、MAV以外については従来の40%から15%(最初の3カ月)〜20%(その後9カ月)にそれぞれ引き下げると定めたばかりだった。しかし、こちらも、上院の猛反発を受けて、農務省が先週末、関税率を第128号の規定よりも5%ずつ引き上げ、7月7日までMAVについては10%(その後9カ月間は15%)、MAV以外については20%(同25%)とする方針を明らかにしている。
▽インフレの主役
比のASF感染は2019年9月に初めて確認され、これまでに国内12地域46州493市町に拡大。約300万頭の豚が死亡し、国内の養豚業と関連産業に1千億ペソを超す損失をもたらした。
豚肉の小売価格の高騰も引き起こし、昨年11月から続く3〜4%台の消費者物価上昇の代表的な原因とされてきた。
政府は、首都圏で高騰する豚肉価格を統制するため2〜4月に小売価格の上限を設定。その後、4月9日からは輸入豚肉に推奨小売価格(SRP)を課す方式に移行しており、今後、新たな推奨小売価格が設定される可能性がある。(谷啓之)