中国製など3ワクチン治験へ FDAが申請を承認 ファイザーのみ緊急使用許可
食品医薬品局は、コロナワクチンの国内での治験ついて、シノバック・バイオテクなど3社の申請を承認
フィリピン食品医薬品局(FDA)は、新型コロナウイルスワクチンの国内での臨床試験(治験)について、中国の製薬会社シノバック・バイオテックなど3社の申請を承認した。FDAのドミンゴ局長が19日の記者会見で明らかにした。
ワクチンの治験申請が承認された社はシノバックのほか、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)傘下のヤンセンファーマ(本社・ベルギー)と中国が拠点のバイオテクノロジー企業クローバー・バイオファーマシューティカルズ。
J&Jのワクチンは英アストラゼネカと英オックスフォード大が開発したのと同じ「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれるタイプで、比較的安価に大量生産できる。接種が1回だけですみ、保管や輸送に特殊な設備が不要なことも利点。年内に10億回分の生産を目指している。
また、クローバーは英製薬会社グラクソ・スミスクラインと米ダイナバックス・テクノロジーズの協力で、免疫反応を高める物質(アジュバント)を加えているという。
▽使用可まだファイザーのみ
英字紙スタンダードによると、FDAはワクチンの治験だけでなく緊急使用承認(EUA)に関する各社の申請も審査しているが、これまでに比政府がEUAを認めたのは米ファイザー社のワクチンだけ。ファイザーはすでに世界保健機関(WHO)が緊急使用を認めており、米英両国で承認を受けているが、シノバックは海外でも「成熟した規制当局」からのEUAは得ていないという。
コロナ対策のバヤニハン法に基づき、政府は医薬品の寄付を受け付けている。FDAのドミンゴ局長は「企業は他国で使用を承認されたワクチンの寄付ができる。FDAが認めれば保健省の監督の下、接種もできる」とし、企業からの寄付分については例外的に使用も可能としている。
▽シノバックも申請
一方で「政府調達の場合は使用の際、EUAが必要で、EUAなしでは使用はできない。シノバックワクチンがEUAの発行前に到着しても、接種はできない」と説明した。
ドミンゴ局長によると、シノバック社はすでにEUAの申請をしており、承認に必要な最新の試験データと中国政府が認めたEUA文書の提出を約束しているという。
先週、来比した中国の王毅外相がワクチン50万回分を比政府に寄贈する意向を明らかにしたことについて、同局長は会見で「ワクチン選定をめぐるFDAの評価に影響を与えないだろう」と述べた。
▽インド製も確保
ノルウェーでファイザー製ワクチンを接種された高齢者33人が後に死亡したという報道についての質問に対し、同局長は「ワクチンに副作用が見つかった場合には、EUA取り消しなどの可能性もある」と答えた。同ワクチンのEUAには、すでに重度のアレルギーを持つ人の使用を禁じる警告が掲載されているという。
また、ロケ大統領報道官は19日、政府が新たにモデルナ社製ワクチン2千万回分を確保するとの見通しを明らかにした。政府はこれまでに、ノババックス社とインドの血清研究所が開発したワクチン3千万回分、シノバックから2500万回分、アストラゼネカから1700万本の計7200万回分を確保していると説明してきた。(谷啓之)