VFA破棄を見直せ 長期的な国益を優先すべき
ドゥテルテ大統領による反射的にも見える訪問米軍地位協定(VFA)の破棄決定に対し、上院のリーダーらや主だった閣僚が慎重な対応を求めて声を上げている。表向きには、ビザの停止が大統領のVFA破棄決定のきっかけになったとされるデラロサ上院議員でさえ、同様の発言をしているほどだ。
同協定はラモス政権時に策定され、エストラーダ政権時に上院によって批准された。続くアロヨ大統領が2002年に米軍の訪問を認め、実際に運用されるようになった。目的は、身代金を要求する誘拐事件を起こして観光客や投資家を恐れさせていたテロリスト集団のアブサヤフに比が対抗できるよう米軍が支援するというものだった。
その間、米軍基地は閉鎖され、米軍は撤退し、比米が合同演習を行なっていた南沙諸島の領有権を中国が主張するようになった。仲裁裁判所で同地における比の主権が認められたにもかかわらず、今や人工島に複数階の建物が居座っている。比の防衛力は弱い。
南シナ海とその空域で航行の自由が保障されるには、パワーバランスが必要となる。比はその力の均衡を同地域にもたらすことのできる国、米国と条約を結んでいる。この同盟関係には相互防衛条約の下でのVFAが必要なのだ。
さらに、VFAは自然災害などの緊急事態の際に、米軍が迅速な人道支援を行うためにも必要だ。違法薬物の流入や人身売買といった国際的犯罪やテロとの戦いにも不可欠だ。
同盟関係は、長期的な国益の下に築かれており、一政権の細かい事情を超越するものだ。政権内のVFA支持者が言うように、偏った条項があれば交渉によって修正すればよい。両国の首脳が個人的に、また国家レベルで友好関係を維持しながら同協定について議論すればよいのだ。(10日・スター)