人権侵害を繰り返すな 政府への警告
ジュネーブで開かれた国連人権理事会で、政府代表のカエタノ上院議員が、違法薬物取り締まりに絡む法法規的殺人などの人権侵害について「言い訳」をしているのと同時期に、マルコス政権下の人権被害者に対する補償で、歴史的な一歩がやっと踏み出された。
人権被害審査委員会は首都圏ケソン市のフィリピン大学で8日、マルコス政権下の人権被害者317人に対し、補償金を支給。民衆が蜂起し、マルコス独裁政権を打倒したアキノ政変(エドサ革命)から今年で31年。その間にこの世を去った人権被害者も少なくない。
同委員会は3月、人権被害者約4千人に対し、補償金計約3億ペソを支給すると発表していた。委員会は拷問など被害の度合いなどの審査を経て、補償金額を決定、被害者に2万5千〜7万5千ペソを支給した。この額は、不当逮捕の末に長期間にわたり収監され、拷問を受け、仲間を殺害されてきた人権被害者にとっては、とうてい補償としては足らない。しかし、政府から形としてでも、補償金が初めて支払われたことに重要な意味がある。
賠償金は、マルコス家が汚職でスイス銀行に蓄えた不正蓄財から被害者に支払われた。不正備蓄と認定された預託金は1997年のスイス連邦最高裁判決を受け、比国内の銀行に移管。所有権を争う裁判を経て、やっと今、人権被害者のもとへと渡った。
今、比政府は再び「治安維持」の名のもとに人権侵害を侵す。負の歴史は、決して繰り返されてはならない。(9日・スター)