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3月5日のまにら新聞から

麻薬撲滅戦争はやめよ 若き奉仕医師の射殺事件

[ 738字|2017.3.5|社会 (society)|新聞論調 ]

 14年間続いたマルコス独裁政権下ですら超法規的殺人は約3千人だった。現政権下ではもっと短い期間にそれを上回るフィリピン人の命が奪われている。しかも、その多くは力の弱い貧困層の出身者たちである。

 警察は麻薬撲滅対策で路上から窃盗や強盗などの犯罪が減少したと主張しているが、それとは逆に殺人事件は増えているのだ。しかも時の政権がそのような撲滅作戦を主導していることはどう考えればいいだろうか。

 国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは「麻薬戦争の実態は、警官が麻薬密売容疑者を定期的に殺害し、麻薬や拳銃などその証拠品を後で現場に持ち込んでいる」との調査報告書をまとめている。

 今月1日にミンダナオ地方北ラナオ州カパタガン町でドレイフュス・ペルラス医師が射殺された事件は麻薬事件とは関係がないと思われる。同医師は同日夜7時半ごろ、自宅に戻るためオートバイに乗って移動している最中に、武装した容疑者に射殺されたのである。

 彼は31歳の若き内科医で、過去12年間にわたり保健所職員すらいなかった貧しい町に派遣され、任期が終わった後も、住民のために診療活動を行っていた医師だったのである。彼が殺された直後、住民の一人がフェイスブックに「何と大きな損失か。彼は私たちの町の保健システムを改善するために多大な努力を払ってきた人だった」と嘆いている。

 この医師の殺害事件は、やはりマルコス政権期にサマール島の辺境地で活躍したレンベルト・デラパス医師を思い出させる。

 彼も貧しい村で医療奉仕していたが、凶弾に倒れ、「戒厳令下の殉教者」と呼ばれた。麻薬戦争という名の超法規的殺人で一般国民が数千人も殺されるというのはやり過ぎではないだろうか。(4日・インクワイアラー)

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