タイから日本へ医療相談 孤独死防止へ見守りも
日本人移住者の高齢化が進むタイのチェンマイで、介護用品の販売や健康管理などのシステム構築に取り組む企業が出てきた。東南アジアでも高齢化が課題で、現地の富裕層も視野にサービスを展開するのが狙い。日本に住む高齢者の安否確認や孤独死の防止にも生かせないか模索している。
▽相談場所づくり
栃木県内でグループホームなどを展開するフレンド(同県小山市)は、2015年からタイ北部に進出。チェンマイでつえや椅子、ベッドといった介護用品の販売や貸し出しをする店を2店舗展開している。日本人のほか、現地の富裕層の取り込みに力を入れる。
山口馨右会長は約5年前にチェンマイで始めたボランティア活動を通じ、高齢の日本人が多いことを知った。山口会長は「まずは在宅対応ができるように介護用品をそろえ、相談ができる場所づくりを目指した」と語る。
チェンマイに高齢者向け設備が充実したゲストハウスを17年中にも開設しようと準備中だ。海外展開を担当する望月和巳在宅介護事業部長は「認知症になった人や帰国できない人が生活する場など活用方法を考えていきたい」と話した。
現地の医療機関などと連携し、介護士などの人材育成にも力を入れる。
▽ITで安否確認
日本人の長期滞在者を対象に、日々の健康状態の把握や安否確認に取り組む企業もある。
査証(ビザ)の手続きの代行業務などをしているグリーンライフサポート(チェンマイ)は、日本のIT企業と協力し「見守りタイホットライン」を構築。16年7月、スマートフォンを活用した健康管理や相談を有料で始めた。現在会員は約20人。
専用アプリを使い、利用者は毎日、体重や血圧を記録して送信する。3日間健康データが届かない場合は担当者から連絡が入る。孤独死を防ぐため、室内に人の動きを感知する小型センサーを置くサービスも展開している。
サービスを利用する戸井田紗代子さん(70)は「気管支炎を患ったばかり。夫が日本に帰国し、一人でタイにいる時には安心感がある」とした。
このほか、高齢化が進む東南アジア各国でも現地の富裕層向けサービスの展開を検討、日本での活用も考えている。
▽遠隔支援
アジア各国で医療などの技術協力をしているアジア医療介護交流協会は現地に滞在している日本人向けに、健康管理や医療に関する遠隔支援の体制構築を目指している。
協会の専務理事で、JCHO東京新宿メディカルセンターの溝尾朗内科部長は「現地滞在者が日本の医療機関と直接、連絡できる仕組みができれば、日本語で安心して健康や病気の相談を受けられる」と語った。(チェンマイ共同)