ハロハロ
学生時代、腹がよじれるほど笑った漫画が「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(こち亀)だった。主人公の巡査長、両津勘吉はM字型につながった太い眉毛が特徴だ。意地っ張りで道楽好きなそのキャラは、違法薬物容疑者1千人以上を殺害したフィリピン国家警察も顔負けのはちゃめちゃさである。通行人に道案内を頼まれても競馬新聞を読むか昼寝で知らぬ存ぜぬを押し通し、またある時は金もうけに目がくらんでさまざまな副業に手を出す。
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長年慣れ親しんだ週刊少年ジャンプの連載が17日で終了することを知り、実家に眠っていた50冊ほどのコミック本を久しぶりに引っ張り出した。あらためて読み返してみても、浅草の花火職人や足立区のお化け煙突が登場するなど、下町人情にあふれた昭和の残り香が漂ってくる一方、携帯電話の普及や街の発展ぶりなどその時々の流行や社会をとらえる描写も随所に散りばめられ、決して読者を飽きさせない話題満載である。
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連載は私が生まれた翌、1976年から40年間続いた。しかも1度の休載もない。月2回の連載すらひいひい言っていた身からしたら、まさしく神業である。連載最終号で著者の秋本治さん(63)はこうつづった。「あの不真面目でいいかげんな両さんが40年間休まず勤務したので、この辺で有給休暇を与え、休ませてあげようと思います」。漫画史におけるひとつの時代が終わった。(竹)