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7月11日のまにら新聞から

「アキノミクス」の遺産 前政権の経済政策

[ 687字|2016.7.11|社会 (society)|新聞論調 ]

 アキノ前大統領の任期中、たびたび「アキノミクス」について書いてきた。供給力を重視した1980年代の米国の「レーガノミクス」や、貧困削減に主眼を置いたタイの「タクシノミクス」とは異質のものだった。ではアキノミクスの定義は何だろうか。

 アキノ政権下の経済政策を特徴付けるものと言えば、民間投資促進への方向転換だ。2009年に3・5%増だった国内総固定資本形成は大統領就任後の10年には19・1%増に拡大。任期を通して見ても毎年2桁台の成長率となった。

 前大統領が掲げたキャッチフレーズ「汚職なければ貧困なし」に代表されるような清く正しい政治の推進は、企業マインドの改善に貢献している。国会議員向け優先開発補助金(PDAF、通称・ ポークバレル)の不正割り当てのような何億ペソもの資金が絡んだ大規模な汚職は前政権下で改められた。

 政府はクリーンとは言いがたいが、国民を悩ませてきた歳出の「穴」に栓をしたおかげで、財政余地は広がった。近年は予算不足に頭を悩ませる必要はなくなった。

 前政権下では資金の不正流用に対する厳しい追及が経済成長の足を引っ張っていると同時に、個人投資の拡大が成長を後押しした。この補完関係もアキノミクスを特色付けている。

 比の物価は安定し、失業率は目に見えて縮小した。経済成長の速度はアジア諸国の中で最も速い。16年第1四半期のGDP成長率は前年同期比6・9%で、今後はさらに伸びる見通しだ。

 前大統領は国民が望んでいた経済状況を残していった。「突破口」を開いた功績は称賛に値する。(5日・インクワイアラー、シエリト・F・ハビト氏)

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