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4月18日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 599字|2016.4.18|社会 (society)|ハロハロ ]

 フィリピンで仕事をすることになった。4月初め日本を出る時、桜が満開だった。当分の間、桜とも縁がなくなるかなと思いながらの旅立ちだった。今ごろ桜前線はどこまで北上しているのだろうか。毎年、宇和島、高知、それに大地震に見舞われた熊本などが開花一番乗りを競い合う。そのために数日前から標準木をストーブで温めるといった冗談まで飛び交うほどだ。全国各地には桜の名所がある。奈良・吉野山、京都・醍醐寺、東京・千鳥ヶ淵、青森・弘前公園。

 それでもどこの桜が一番かと問われれば、住んでいる町や故郷、思い出の地にある桜を挙げる人が多いと聞く。私は今でも生家がある静岡市の日本平と答えておこう。花の中でも特に桜は日本人の心情や感情と結びついているといわれる。古来、歌人や詩人は満開の桜をめでると同時に散りゆく桜に心を寄せた。錦秋の紅葉の華やかさをたたえる一方、水面に浮かぶ落ち葉のはかなさを嘆いた。多分、日本人の自然に対する美意識であり、自然の中に自己を対置する精神が表されていると思う。

 日本人がとりわけ繊細と言っている訳ではない。どの国の人々も自然に心を動かされ、花鳥風月に心を寄せる感情は同じだと思う。フィリピンの人々はどういう感性の持ち主なのだろうか。日々の生活に追われる人も多いだろうが、どんな感覚の国民なのだろか。たそがれ時、マニラの街角にたたずみながらそんな思いに浸っていた。(立)

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