興奮と懸念が混在。ASEAN経済統合
ここ数年、2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済統合へ向けた動きが活発化してきた。あと半年あまりで、国内総生産(GDP)計2兆ドル、人口5億人超の巨大経済圏が誕生するわけだが、経済学者や各国政府、財界関係者の間では、期待まじりの興奮と懸念が混在しているようだ。
先週、この興奮を打ち砕くような発言が、アジア開発銀行(ADB)専門家の口から飛び出した。ASEAN加盟各国の「非関税障壁」により、統合へ向けた一部目標の達成、政策履行が困難となり、完全な経済統合はさらに10年後の25年に延びる、というのだ。
専門家によると、関税分野の目標達成はほぼ可能。なぜなら、ASEAN自由貿易地域(AFTA)に基づき、比やマレーシア、タイ、シンガポールなど一部加盟国間の関税は全品目の99%まで撤廃済みだからだ。
問題となる非関税障壁は、適切なインフラ整備、知的財産権の保護、通関業務の自動・近代化、汚職の排除、投資誘致策など多岐にわたる。経済統合のためには、これら分野の政策・方針を同調させる必要があるのだが、憲法規定で外資の出資比率を制限する比など一部加盟国は、改憲や法改正という難題をまずクリアせねばならない。加盟国間の汚職度、インフラ整備面の格差是正も未解決の課題だ。
貿易産業省高官は「準備は完了した」と楽観視しているようだが、これは「比から域内他国へ」という半面にすぎない。他方、域内他国から比への投資は、一部業種への外資参入禁止や出資比率規制により、お寒い状況が続いていると言わざるを得ない。経済統合により、ASEAN全体の国際競争力向上が予想される中、比政府はさらなる経済自由化、法制度整備を進めなければならない。(6日・インクワイアラー)