武装解除は長い道のり
対MILF和平合意
政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)が、包括的和平合意に到達した。正規部隊の武装解除での合意には希望が持てるが、実際の段階的な部隊の解体と国軍の撤退は非常に険しい道のりだ。特に、今回の和平合意が1996年の和平協定の裏切りだと主張するモロ民族解放戦線(MNLF)がいる以上、「一度裏切ったのだから、今回も政府は裏切る」という疑念を、次期大統領は一貫した誠意で払拭しなければならない。我が国では、政権の約束が単なる提案にすぎないのは言うまでもない。いつでも違法性を持ち出して合意をほごにできる。
国民に武装解除実現を信じさせ、信頼を広く長く維持するのも忍耐が必要だ。アイルランド共和国軍の武装解除は10年かかった。
さらに大きな課題は、 地方有力者らの私兵団解体だ。和平プロセスを側面支援する国際団体によると、2012〜13年に紛争地域で起きた暴力事件600件のうち、MILF、アブサヤフ、MNLF、新人民軍が関与した事件は100件で、残りはすべて私兵団や犯罪組織によるものだったという。敵が武装しているのに、自分だけ武装解除するわけにはいかないというロジックを変え、疑念を除くには相当な時間がかかる。イスラム教徒居住区で暗躍し、武器や麻薬の取引、密輸、誘拐で巨額を動かす「陰の経済」の存在も根深い。
障壁はある。だが今の政府とMILFが、優れた何かを持っているのは確かだ。北アイルランド紛争が終わるとは誰も考えなかったが、和平は成立した。数年前にMILFが武装解除に同意すると思った人はいなかっただろう。しかし、暫定的には合意に至った。この調子でいけるが、まだまだ道のりは長い。(1月29日・インクワイアラー、コンラド・デ・キロス氏)