ねばり強さに敬意を
香港報道関係者の取材
インドネシアのバリ島で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、アキノ大統領にまともな質問をぶつけた香港の報道関係者が、取るに足らないことで糾弾された。
彼らの質問は二つあった。一つは2010年8月に起きたバス乗っ取り事件の「犠牲者の遺族からの要望を無視するのか」。もう一つは、香港の梁振英行政長官と「面会予定はあるのか」だった。カランダン大統領府報道班長は、香港の記者たちが攻撃的で非礼な態度でアキノ大統領に詰め寄り、「一線を越えた」と評した。
大統領にしつこく食い下がった記者たちの行動は、非難ではなく、むしろ称賛されるべきだ。犠牲者に対して具体的な行動をとらず、明言を避け続けるアキノ大統領のような取材対象に対し、粘り強く質問することは、プロの記者として仕事のうちだ。大統領府関係者は記者たちの叫び声を不快な行動と指摘したが、記者は注意を引くために大声を上げることもある。
アキノ大統領の側近らにそそのかされたこともあってか、主催国のインドネシアは香港の取材関係者の取材許可証を剥奪した。この措置は、情報公開法案の審議を妨害し続ける大統領の行動をほうふつとさせる反則行為だ。
香港の記者たちは、他の国際会議と同じように、良い記事を書くため、やるべき仕事をしただけに過ぎない。叫び声を上げてでも現場で質問することは、香港の記者だけでなく、全ての報道関係者が持つ権利だ。それが仕事なのである。
大統領は記者に詰問された被害者ではない。回答を避け続けるその態度こそが、記者からのしつこい質問を生んだのだ。記者が質問できる機会すら少ないのだから、大統領は詰問されても当然と言えよう。(9日・トリビューン)