中国としっかり向き合え
米軍のプレゼンス強化
米国政府とアキノ現政権は、フィリピンにおける米軍駐留とプレゼンスの強化を急いでいるように見える。米軍による空港、港湾施設の「利用拡大」に関するガスミン比国防長官発言からわずか数日後、大統領府は、訪問米軍地位協定(VFA)など関連条約・協定の見直したい意向を上院に伝えたようだ。
VFAは、あくまで国軍との合同演習に参加する米軍の一時的駐留を前提にした協定であり、かつての米軍施設の残るスービック港やクラーク空軍基地を恒常的に使用させるには、新たな取り決めが必要となる。
言うまでもなく、米政府がアジア・太平洋地域における海軍力強化を進める背景には、急速な経済発展を遂げるアジア諸国の中で、軍事力と影響力を拡大させる中国の存在がある。中国軍の装備は、米軍より数十年遅れてはいる。しかし、その軍備拡張のペースは非常に早く、米政府にとって同地域の経済的権益、影響力を中国から守ることが急務となっている。
一方、アキノ現政権は「自衛困難」を理由に、米政府の求めに応じ続けている。これは、在比米軍基地撤廃の是非が国論を二分した1991年、基地存続を訴えた亡母のコラソン元大統領と同様、世界覇権を目指す米国戦略の一翼を担っていることを意味する。
わが国は、米国による植民地支配の始まった20世紀初頭から、一貫して米国寄りの立場を取ってきた。しかし、その結果は、貧困層を犠牲にして、富裕層と権力者が富をほしいままにする「倒錯した民主主義」であった。
今、アキノ大統領に求められるのは、米国の陰に隠れることではなく、中国といかに向き合っていくのかを考えることだ。「米国なしでは国を存続させ得ない」とでも言いたげな大統領の姿勢は、自国民に対する最大の侮辱でもある。(1日・トリビューン)