元警視脱走事件
国民の忍耐は限界だ
歴代政権の広報担当者殺害事件に関与したとして、殺人罪で起訴されたマンカオ元国家警察警視が2日、拘置先の国家捜査局を脱走した。ばかばかしさに、あぜんとした。大規模な捜索が始まる中、脱走から10時間後には、テレビ局の電話取材に出演する始末だ。
「責任者は厳罰だ」。ロハス国家捜査局長のお決まりの言葉に、一般市民からは「えっ、ほんと?」との声。
アロヨ前政権下で政治的殺人を指揮したとされるパルパラン退役陸軍少将、ラジオ局職員射殺事件のレイエス・パラワン州の前知事兄弟ら、逃亡中の大物容疑者5人を「ビッグ5」と呼ぶ。
マンカオ元警視、心配は無用ですぞ。逮捕状発行から1年以上たっても、国家警察は5人のうち1人も逮捕できないのだから。レイエス兄弟は、偽造旅券でバンコクに逃走したとの情報があるのに、その確認すらできない。
兄弟の1人がマニラ空港の職員2人に付き添われ、入管を通過する映像が残っている。それでも、警察は「出国の確証を得るまでは国内にいると信じる」の一点張りだ。
パルパランの場合は、もっと目に余る。逮捕状の発効は2011年12月。それから、1年5カ月たっても、国家警察も国軍も「所在は不明です」と言い続けている。残る2人も1年以上、自由を満喫している。
5人に共通するのは、権力と金、コネを持ち、政府高官や民間人有力者と親しく、その支援で逃亡中の身の安全に心配がない点だ。マンカオ元警視も、例外ではない。
今や、責任者の首をまな板の上に並べるだけでは、足りない。大統領府が「良い統治」に真剣であれば、少なくとも1人はすでに、逮捕しているはずだ。国民の忍耐は刻々、限界に近づいている。(4日・インクワイアラー)