メーデー政労交渉
大統領に軍配
メーデーの1日、労働者はアキノ大統領を非難し、その手製人形を燃やして、政権の運営姿勢をあざけり笑った。だが、大統領は手ごわい。政府内で「真っすぐな道! 真っすぐな道!」とほえて回り、その「道」をひた進む。
労組側は最低賃金の引き上げ、契約雇用の廃止、非課税枠の拡大を要求した。大統領の答えは「ノー」。
労組側は現行の最低賃金(首都圏456ペソ)を「飢餓賃金」と言う。政府は「賃上げより、雇用創出の方が先だ」と反論する。契約雇用は、産業和解三者協議会に丸投げした。免税要求に同意すれば、27億4千万ペソの税収を失う、と全面拒否。
大統領は逆に、社会保険制度を維持するため、保険料の労働者負担分を引き上げる提案をした。大統領は労組側に「ほんのわずかな犠牲」を呼びかけたつもりだろう。 現在、労働者が負担する保険料は月収の10・4%。大統領は、国際水準に比べるとかなり低く、11%に引き上げたい、と述べた。この国の労働者の賃金が国際水準を大きく下回っている事実には、触れずじまいだった。
大統領はまた、1980年以降、年金支給額は21回も引き上げられたのに、保険料の負担増は2回にすぎない、とも指摘した。ここでも、年金の支給水準が依然、月額わずか2千ペソにとどまっている事実には、言及しなかった。
大統領は続ける。「社会保険制度の基金不足は約1兆1千億ペソと、破産状態だ。保険料の引き上げで1410億ペソ不足幅が縮まる」。基金不足は20年から30年後に発生する可能性が指摘されているだけ。将来の人口動態で変わるのに、またも触れない。政労トップ交渉の軍配は、本拠地マラカニアン宮殿で戦った大統領に上がった。(4日・スタンダードトゥデー)