決断の時だ
サバ州領有権問題
マレーシア捜査当局は現在、サバ州に潜伏する「スルー王国軍」を名乗るフィリピン人集団の掃討に苦戦している。交戦状態が長引けば、アキノ大統領にとっても、大きな試練となるだろう。
サバ州には、約80万人のフィリピン人が違法滞在し、その大半はスルー州のタウスグ族である。
サバ州で違法占拠集団が対峙しているのは、経済成長に伴い、治安問題がほぼ解消したため、戦闘経験の乏しいマレーシアの軍・警察である。その経験不足は空爆を実施した際に、比人集団側に死亡者が1人も出なかった、とされる結果から明らかである。
サバ州領有権問題の早期解決に向けて、これまでのところマレーシアの方針に同調しているアキノ大統領にとって、紛争状態を鎮静化させるために求められるのは、正確な判断だ。誤れば、今後数カ月、問題の解決が長引く恐れがある。隣国との関係維持、そして国益という板挟みで綱渡りが続いている。野党勢が優勢とされる6月の選挙を控えるマレーシアのナジブ首相は、政権を維持するため、掃討作戦を続けるだろう。
アキノ大統領にとっての最大の試練は、タウスグ族をマレーシアから帰国させ、紛争状況を悪化させないことだ。アキノ大統領はマレーシア領のサバ州内ではなすすべがないと主張している。しかし、サバ州に違法入国する国民の処遇には、責任を負わなければならない。憲法上、彼らを守る義務がある。
今回の問題が起きた結果、マレーシア政府による同国在住のフィリピン人への弾圧が強まる恐れがある。だからこそ、大統領には、一層の指導力が求められる。
これらを含め、大統領は武力紛争を回避する決断をしなければならない。しかし、立場を明確にする行動は、大統領にはあまり見られない。(8日・トリビューン)