正義を渇望する
大量虐殺公判
ミンダナオ地方マギンダナオ州で2009年11月に報道関係者ら57人が射殺された大量虐殺事件で、殺人容疑で逮捕状が出された容疑者約200人のうち、半数近くの民兵は依然として逃走中である。重要証人が次々と殺害され、永久に口封じされる状況では、特に驚くべきことではない。
虐殺を指揮したとされるアンパトゥアン一族の財力と武力は著しく減退した。しかし、その政治的な影響力は大きい。親族がイスラム教徒自治区(ARMM)内の公職に居座っているためだ。一族を訴追するため、法廷で証言しようとする証人が、今後も殺害されたとしても不思議ではない。とすれば、57人の遺族に正義が訪れることは決してないだろう。
証人保護制度の利用を拒否する人々に対しても、政府は最大限の保護に努めると約束した。ARMM内で銃規制が進めば、証人保護につながるだろう。なぜ、ARMM内で銃規制ができないのか。「自治」は銃規制の免除を意味しないはずだ。
国ができることがもう一つある。審理の迅速化である。裁判所は、虐殺に関与した容疑者全員の逮捕と訴追を待つ必要はない。これまでに逮捕されたのは約100人。事件から3年近くが経った今も、公判は続く。フィリピンにおける裁判のスピードを考えると、被告の数が増えれば、公判はその総数と同じ200年続くのではないか。
アンパトゥアン被告=前マギンダナオ州知事=やサルディ被告=ARMM元知事=ら一族幹部の拘置は続いている。200年はおろか、裁判に20年もかけるべきではない。
虐殺事件に関わった主犯格3人の審理を迅速に進める。それが、正義を渇望する遺族をいやすし、その他の被告の裁判の迅速化にもつながる。(4日・スター)