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7月9日のまにら新聞から

約束を果たせ

[ 706字|2012.7.9|社会 (society)|新聞論調 ]

政権発足2年

 アキノ政権が発足してから2年が経過した。バルテ大統領報道官補は記念の声明を発表し「国民はもはや、絶望の淵にはいない。アキノ大統領は困難な課題を成し遂げた」と自賛した。

 「絶望の淵を抜け出した」と宣言することは、錯覚であり、無分別だとの非難を招いても仕方がない。ただ、声明の後半で「依然、課題は山積みだ」と率直に認めている点は好感が持てる。

 実際、現政権はここ数カ月、特に汚職撲滅や透明性の向上で明るいニュースが多いと主に海外から脚光を浴びている。他方、コロナ前最高裁長官の弾劾成立やアロヨ前大統領の訴追に向けた動きは、政治的混乱や経済的損失をもたらすとの批判がある。

 ある経済アナリストは、最近出版した自著の中で「フィリピンはまた、力強い成長期を迎えようとしている。アキノ大統領は任務遂行に必要な改革の勢いを生み出しているようだ」と解説した。米経済紙フィナンシャル・タイムズも、フィリピン経済の先行きを楽観視している。

 確かに、経済指標は明るい。しかし、現実は依然厳しく、大半の国民がこれまで通り、貧困にあえぎ、その生活に目に見える変化はない。 

 アキノ政権の人権侵害問題への取り組みも、情けない状況だ。拉致事件の黒幕パルパラン退役陸軍少将は野放しだし、ミンダナオ大量虐殺事件の目撃者が相次いで殺されている。

 アキノ大統領は、任期終了までに農地改革事業を実行すると農民に約束した。ただ、国民は改革の成果を実感するまで、疑いの眼差しを向け続けるだろう。

 フィリピンでは、改革へ期待を持たされ、裏切られるのが常だった。大統領は残る任期4年で約束を果たすべきだ。(4日・インクワイアラー)

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