失政の身代わり
前大統領逮捕
フィリピンの経済成長がなぜ鈍化したかと問われれば、「主にアキノ大統領と大統領府の失政に原因がある」と答える。大統領は執ような政治ゲームの末に、失政の責任をアロヨ前大統領に負わせることには成功した。
まともな評論家なら、大統領が明けても暮れても政敵の揚げ足取りをしていると批判するだろう。欧州のアジア情勢の専門家や研究所でさえ、大統領が前大統領を追い詰めることの本質を見抜いている。
政治経済アナリストのピーター・ワラセ氏は、前大統領を追い込むことに焦点を当て続けるのは、大きな危険を伴うと警告。その例として経済成長の減速を挙げた。
経済諸政策の中では、ビジネス部門の推進に大きな遅れが生じており、目玉の官民連携(PPP)事業も遅々として進まない。エコノミストも低成長の要因に、PPPの遅れを指摘している。比は投資家から、果てしない政治抗争に没頭する国と見られている。
大統領は実現できない経済政策から目をそらさせるため、反アロヨ・キャンペーンを張ったようにさえ見える。前大統領やコロナ最高裁長官との対立を維持することで、物価上昇や減速中の経済、現政権下で最悪となった空腹度調査などの結果から、国民の関心をそらしてしまった。
今や左派系団体も、生活改善を訴えるデモや集会を控え、前大統領の拘置所への移送を求めている。しかし、こうしている間にも石油製品の価格は上昇している。
もしもビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業の興隆や、比人海外就労者(OFW)の送金がなくても、大統領の経済運営や予算割り振りの失政がなければ、経済成長は横ばいで済んだだろう。(11月28日・トリビューン)