業界の苦悩を反映
比航空労使紛争
台風ペドリン(17号)がルソン地方中北部を横断した9月下旬、フィリピン航空(PAL)の地上職員組合がストライキに突入した。初日だけで国際、国内線合わせて172便を欠航させ、乗客1万4千人に影響を与えた労使紛争は、困難な変化に直面する航空業界そのものの苦悩を浮かび上がらせた。
ナショナルフラッグキャリアーであるPALが大きな変化に直面したのは、今回が初めてではない。1990年代、中国系実業家のルシオ・タン会長は、社内にまん延する「PAL官僚制度」にメスを入れた上で、高給取りだった操縦士を大幅に減員させた。操縦士組合によるスト決行などにより、1998年には「廃業宣言」にまで追い込まれたが、結果的にはこの合理化断行が会社存続を実現させた。
そして13年後に再発した労使紛争は、搭乗手続きや予約受け付け、機内食関係業務の分離だった。経営側は退職金増額や一時金支給などを提示して、地上職員約2600人に退職と外注先企業への再就職を迫ったわけだが、労組員の大部分は待遇面で劣る再就職を拒んでストに参加した。
燃料費の高騰や国内外航空会社との競争激化など経営環境が厳しさを増す中、会社存続をかけて合理化を決断した経営側。そして、自分たちの職を守ることを決断した労組員ら。総額25億ペソにも上る退職金や手当支給の提示にもかかわらず、結局、妥協には至らなかった。
労組側はスト突入から2週間後の今も、「不当解雇」との主張を崩さず、控訴裁判所に解雇の違法性を認定するよう申し立て中だ。法的に正しいのは、合理化に会社の未来をかけた経営陣か、それとも労組側か。戦いの場が司法に移った以上、経営側はその判断が出るまで、労組員らの解雇を一時凍結すべきではなかろうか。(3日・インクワイアラー)