来比は自己責任で?
NPAの鉱山襲撃
比政府と反政府共産勢力の和平交渉が中断した過去3カ月間、比各地15州でフィリピン共産党の軍事部門、新人民軍(NPA)による襲撃事件が相次いだ。にもかかわらず、現政権と軍・警察は対応を怠り、「NPAの総勢力は5千人を割り込んだ」とNPA減退を国民にアピールしてきた。
このような状況下、約300人ものNPAがミンダナオ地方北スリガオ州クラベル町の鉱山会社3社を急襲し、大型ダンプ約20台や重機22台、荷船9隻などを破壊した。さらに鉱山労働者約2千人を人質に取り、10時間近くも鉱山一帯を占拠し続けた。しかし、軍・警察は事件発生に即応せず、陸軍部隊が現場に到着したのはNPAが去った後だった。
アキノ大統領は、オバン国軍参謀総長とバルトロメ国家警察長官に対して、①地元自治体関係者から事件発生の一報があったにもかかわらず、軍・警察が事件に即応しなかったのはなぜか②鉱山へ向かう大隊レベルのNPAの動きを軍・警察が事前に把握できなかったのはなぜか︱︱という2点をただすべきだ。
襲われた会社のうち、タガニート鉱山(TMC)は日本の住友金属鉱山などとの大型合弁事業を進めていた。襲撃により事業は一時中止を余儀なくされ、日本へ帰国した日本人技術者らは、比での「恐怖体験」を語ることだろう。
これは、海外からの投資と観光客誘致を推進する比にとって大きな打撃で、外国人投資家は劣悪な治安情勢を嫌って比に寄りつかなくなる。現政権は海外に向けて「比でビジネスを」と呼び掛けているが、政府が投資家を守れない状況下では「比に来る際は、自分でわが身を守れ」と言っているようなものだ。(6日・スター、アーネスト・マセダ氏)