ベトナムから学ぶこと
農業と経済発展
アキノ大統領が比国民に農業についてベトナムから学ぶよう呼び掛けたのには当惑した。ベトナムから農業を学べというのは、首都圏の住民に、米の生産量が多いのでミンダナオ地方から農業を学べというのと同じだ。ベトナムは人口の73%が農村部に住んでおり、比のそれは37%。しかし、比では輸出の14%を農産物が占め、ベトナムの20%に近い。はるかに生産性が高いのだ。カンボジアやラオスを訪れる際には、感化されやすい大統領に、より的確な情報を上げてほしいものだ。
一方で、ベトナムから学ぶ点が3つある。1つは、農民への土地分配。ベトナムの農業復興は1986年に始まった政府の反集産化政策による。政府は生産量アップへの最適な動機になると考え、農家に土地を分配、権利を保障した。従来ベトナムの農業はマルクス主義に従い、小作農が小さな農家グループが集まった巨大な農場で働いていた。まさに資本家が比の大農園で協同組合を作ったやり方だ。アキノ一族はあらゆる理由を使い、ルイシタ農園の土地分配を拒否するだろうが、大統領が訪越で最も学ぶべきだった点だ。
2つ目は、土地分配は社会主義国であるベトナムが市場経済へと転換したドイモイ政策の環だったということ。これは、年をとった比の共産主義者らへの教訓だ。彼らはエゴを捨て現実を直視するべきだ。
3つ目は、政情の安定。ベトナムは過去20年間、経済発展に不可欠な安定した政情を維持している。比では、エドサ革命1、2という大きな政治不安を抱えた。アロヨ政権では不正疑惑が絶えなかったが、安定した政治基盤でGDP高成長を記録した。歴史上、完全な能力不足と独善的な態度が政治不安を招いてきたのは悲劇である。(4日・インクワイアラー、リゴベルト・ティグラオ氏)