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9月6日のまにら新聞から

中流層の台頭

[ 720字|2010.9.6|社会 (society)|新聞論調 ]

貧困削減への処方せん

 アジア各国は1960年代から貧困層削減に取り組んできたが、依然として世界に占める貧困層のうち、約3分の2をアジア地域が占めている。

 貧困層削減には貧困層を直接支援するよりも、経済を成長させて雇用を創出し、貧困層を中流層へ押し上げることだ。これは世界経済にとっても有益となる。

 十分な収入を得て、貯蓄をし、余裕を持った人生設計を描くことのできる中流層を増大させることで、市場に多大な消費活動をもたらすだろう。

 アジア地域の中流層台頭に関しては、インドのタタ社製低価格車ナノ(2200ドル)や中国のBYDリチウムバッテリー社のリチウムイオン電池(12ドル)が良い例で、成長による雇用創出で業績を上げつつある。

 しかしアジア地域の中流層は、危うい立場にも置かれている。一般的に1日当たり2ドル以下で生活している人たちを貧困層と呼ぶが、アジア地域で出現した中流層のうち半数以上は同2〜4ドル(2005年購買力指標)で生活しており、すぐに貧困層へ転落する危険がある。昨年は景気後退によって雇用機会が喪失、中流層を再び貧困層へ逆戻りさせた。1997〜98年のアジア金融危機では、インドネシアの中流層のうち、480万人が貧困層へ転落した。

 そこでアジア各国は中流層を保護する政策を模索する必要がある。規律正しい国家財政の下、インフラを整備し、貿易の不安定さをなくすことだ。

 経済成長に伴う急速な中流層の出現が生み出す諸々の問題は、今後取り組むべき課題だ。確かなのはこれからの数十年にわたり、アジア地域で中流層が台頭することだ。(30日・インクワイアラー、ジョン・リー・アジア開発銀行首席エコノミスト)

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