「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
30度-24度
両替レート
1万円=P3,820
$100=P5885

8月30日のまにら新聞から

アモックを生む土

[ 731字|2010.8.30|社会 (society)|新聞論調 ]

元警部の無差別殺人

 「AMOK(アモック)」は英語の辞書に載っており、フィリピンやマレーシアなどマレー民族に共通する、精神錯乱状態の中で殺人を犯すことを意味する単語だ。フィリピンでは特に「フラメンタード」という単語で示され、イスラム教徒の間で起きる無差別殺人を意味することが多い。いずれも、マレー民族やイスラム教徒に対する差別意識が潜んでいることは否めない。

 ルネタ公園で起きたメンドーサ元警部による無差別殺人は、はたして衝動的に起きた精神錯乱による犯罪だったのか、我々は慎重に分析する必要がある。特に今回の場合、彼は自分の標的が誰なのか、また自分は何をしようとしているのかを十分知っていたからである。

 元警部は過去に警察官として17回も表彰を受けたという。しかし、たった1回の恐喝事件に関与した疑いで罷免され、退職金も無支給となった。このため、昔からのフラメンタードのごとく、彼は屈辱を受け、辱めを感じ、自分の汚名をそそぐために極端な公開「パフォーマンス」を選んだのだ。

 3年前にバスに乗った自分の保育園の園児26人や保育士らを誘拐したドゥカット容疑者が思い出される。この時は誰も傷つくことがなく、犯人は違法監禁などで逮捕された。被害者の両親らが犯人の釈放を請願し同容疑者は2年前に保釈処分を受けている。

 我々は人々をアモックに押しやる社会について理解する必要がある。汚職で訴えられた場合でも金持ちや権力者なら訴訟手続きを長引かせ、証拠不十分で無罪放免になることが容易だ。一方で元警部は迅速な裁きを受けて処罰された。市民の苦情に適切に対応するシステムを持たないフィリピンの文化と社会がアモックを生み出しているのだろう。(25日・インクワイアラー、マイケル・タン)

社会 (society)