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4月26日のまにら新聞から

司法長官の不当判断

[ 702字|2010.4.26|社会 (society)|新聞論調 ]

虐殺起訴取り消し

 現政権はマギンダナオ州で57人という大量の命が奪われる虐殺事件を発生させてしまった。そして今度は同事件に関与したとして殺人罪に問われているアンパトゥアン一族2被告の起訴取り下げを命じ、司法制度および法の原則を「虐殺」した。

 この背景には、2004年の前回大統領選、続く07年の上院選で不正に協力したとされる同一族と現政権との緊密な関係がある。なぜならこの政治的借りと引き替えに、同一族の武装強化を容認したからだ。

 犠牲者の遺族は同一族幹部らが起訴され「公正な裁きが下される」と喜んだ。しかし、アグラ司法長官の判断で、遺族の気持は怒りに変わった。

 事実、次期統一選まで3週間と迫った中での司法長官判断には多くの疑問が浮上した。アンパトゥアン一族が現政権への票集めに利用されるかもしれないという不安。釈放されれば、彼らの存在は有権者にとって脅威になる。そして、口封じのために遺族側に何らかの襲撃を行う可能性もある。

 司法長官の判断は極めて不当である。同一族含む全被告は殺人罪で起訴され、拘置先の首都圏警察本部へ移送された。法の原則に基づくならば、担当判事が公判を続け、罪の有無を判断しなければならない。

 しかし同長官は裁判所の特権を先取りし、法の原則を犯した。判断は裁判所に委ねるべきだったのだ。

 大統領府の報道官は「虐殺事件の司法手続きに大統領が関与したという疑念は不当である」と述べた。われわれの言う「不当」とは、法の原則が無視されたことにある。今回起きた司法の過ちを修正する時間はまだ残されている。司法長官は自身の判断を撤回すべきだ。 (20日・インクワイアラー)

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