不快な決まり文句
隠されたハイチの素顔
ハイチという国に対して多くの悲観的な描写がなされているが、大地震で首都が廃墟となったこの国は、芸術、音楽、文学に秀でた人物を輩出してきた。先月、ハイチ出身のジャーナリストが「言葉のおり」と題した記事を現地紙に掲載した。その中で彼は、ハイチを形容する決まり文句、「西半球で最も貧しい国」を嘆いた。
「ハイチに関する事実を否定するこの決まり文句に不快な気持ちにさせられる。豊かな文化のみならず、同じ西半球の多くの国々がたどってきた歴史と同様、貧困を生き抜き、乗り越え、成功さえも成し遂げるハイチ人の潜在的能力、そしてその人間性をも否定する」
記事が比についてであったら、そこにはお決まりの「東南アジアで最も汚職が蔓延する国」、あるいはかつて中国人が書いた「召使いの国」という表現が並ぶだろう。
「もし海外のジャーナリストがカメラを通して視聴者にこう伝えればどれだけ大きな違いか。『この国が貧しく野蛮な政権に苦しんでいることは違いない。しかし素晴らしい芸術、作家や学者を生んでいる』『確かに多くの虐げられたハイチ人が国から逃げた。しかし米国のユダヤ人や中東のパレスチナ人のように、亡命先で多くの成功を手にした』と」。彼はこういった報道がハイチを世界につなぐことができるという。しかし、ベールに包み隠すほうが簡単なため、ジャーナリストたちはハイチについて何一つ事実を伝えないあの決まり文句に戻る。
ハイチはアフリカ人奴隷の蜂起により植民地の中で最初に独立した。宗主国と土着の文化が融合した独特の文化を持ち、国民の大半がカトリック教徒だ。ハイチを見捨てることは、われわれ自身を見捨てることだ。(21日・インクワイアラー、セレス・P・ドヨ氏)