宙づりの海事法案
本腰入れぬ政府、国会
大統領府が海事法案の早期可決を呼び掛けている。法案は国会で審議保留状態となっていたが、貨客船スーパーフェリー9の沈没が政府の背中を押した形となった。法案内容は国際協力を含むさまざまな分野で模範となるが、現行制度下での惨事発生をみれば、政府、国会のどちらも可決に本腰を入れていない。
海運業の規制撤廃法などを含め、これまでの国会の対応は改善につながらなかった。半面、海事産業庁(MARINA)の権限の一部が労働雇用省(船員)や貿易産業省(海運産業)、比沿岸警備隊(航行の安全性)に分散されたように、政府機関の監視機能や責任、取り締まり権があいまいとなった。
海事法案審議でバウティスタ同庁長官がこれらの機能を同庁に再び戻すよう提案した。法案は、MARINAに船員から運輸業者、船舶会社を対象とする司法・仲裁機能の付与を明記している。さらに、法案作成にはノルウェー政府の支援下、比大行政研究・開発財団やアジア太平洋大学のリサーチ・コミュニケーション財団から招いた専門家の意見も取り入れた。
法案の推進派は7月、アロヨ大統領に早期可決を呼び掛けるため、施政方針演説の中で法案を優先課題として取り上げるよう求めた。一方で、所有船の近代化や責任の負担増を強いられる国内の船会社など、港管理業者による反対もあった。結局、大統領は施政方針演説内での法案言及を避けた。
大統領は政権の主要改革項目として法案を支持しなかったわけだ。法案の廃棄に至らなかったとしても、現国会での成立の道は閉ざされた。政府の呼び掛けなどは責任の所在隠しに映る。(9日・インクワイアラー)