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2月2日のまにら新聞から

現政権の危険な妄想

[ 691字|2009.2.2|社会 (society)|新聞論調 ]

「不死身の比経済」論

 スイスで開かれる世界経済フォーラムで、アロヨ大統領は「比は投資家天国」と演説し、投資を呼び掛けるそうだ。多国籍企業が事業拡大を手控え、コスト削減に躍起になっている今、演説が時機を得ていないことは言うまでもない。

 大統領報道官補のコメントを借りると、同フォーラムでの演説要請は「経済政策における比政府の戦略と成果が全世界に認められた」ためらしいが、大統領はこのような甘言に決して釣られてはならない。世界的金融危機という困難な状況に屈しない「不死身の比経済」というイメージは、国内の現実からかい離しており、現政権の高官らが作り上げた危険な妄想でしかないからだ。

 海外就労者(OFW)からの送金増により、経済危機が比国内へ伝わる速度は一時的に鈍化しているが、その影響は確実に国民生活を覆い始めている。政府は〇八、〇九年の経済成長率予想を下方修正し、海外で失業したOFWの帰国ラッシュに加えて、国内でもインテルのような多国籍企業が労働者を削減し始めた。労働雇用省によると、〇九年上半期だけで最大二十万人の失業者が出る恐れがあるという。

 このような状況下、国内雇用の創出に努めるべき労働雇用省の高官が「オバマ米新大統領が移民受け入れ政策を一新し、比から介護士らを受け入れてくれるだろう」と他力本願の発言をした。確かに、オバマ新大統領は今後数年間で、三百万︱四百万人分の雇用創出を目指している。ただ、これは二百六十万人の失業者を出した米国内向けの政策であり、「米国内で比人失業者の雇用枠ができる」というのは比政府高官らの夢にすぎない。(1月28日・インクワイアラー)

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