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1月19日のまにら新聞から

「脅威は正直者」

[ 687字|2009.1.19|社会 (society)|新聞論調 ]

最高裁長官弾流布問題

 今、プノ最高裁判所長官を標的にした「追い落とし工作」が密かに進められている。その第一弾が同長官に対する弾劾発議が近く出されるという情報の流布。大統領府側は発議の「黒幕」説を全面否定し、同説流布は野党勢が政府を陥れようとする際の常とう手段と反発した。

 しかし、そうした否定の中に真実が隠されている。アロヨ大統領は改憲による政権延命策を否定したことで、延命希望の本心が判明。今回も同様で、大統領府と与党の追い落とし工作否定で、逆に同工作の存在が確実なものとなった。

 大統領にはプノ長官を排除したい理由がいくつもある。政権延命にとり同長官の存在が最大の障害。同長官は政権寄りの最高裁判事たちに取り囲まれているが、これに屈してはいない。プノ長官は就任後、正義の実践者としても評価を受けている。

 同長官はこれまでも現政権にとり大きな「とげ」的存在だった。閣僚ら政府高官の「黙秘権」を認めた大統領行政命令を差し止め、政治的殺人事件に絡んだ人身保護令状申し立ても認めた。

 同氏を最高裁長官に任命した大統領は「飼い犬に手をかまれた」との思いを抱いているだろう。独裁者にとり最も手強い相手は「正直者」の存在。故に、長官排除工作が練られているのだ。

 同長官の命を奪っても、政権側の懸念が解消することはない。政権側にとり最上の手段は長官に「嫌疑」と「脅し」をかけること。ダビデ元最高裁長官が典型例。そのおかげでアロヨ大統領は再選を果たせた。

 だが、プノ長官は政権に屈する人物ではなく、この国が待望する大統領にふさわしい。(15日・インクワイアラー、コンラド・デキロス氏)

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