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1月19日のまにら新聞から

期待できぬ成果

[ 709字|2009.1.19|社会 (society)|新聞論調 ]

大統領指揮の麻薬戦争

 アロヨ大統領は二〇〇一年の就任以来、政府にいくつもの「戦争」に立ち向かうよう命じてきた。それらは「貧困戦争」「汚職戦争」「反政府勢力一掃戦争」「密輸阻止戦争」︱︱など。なのに「戦果」はゼロで、大統領はまさに「敗戦の将」だ。

 大統領府発表とは異なり、国民の貧困・空腹度は高まり、汚職は政府内にあまねく広がり、反政府勢力も一向に排除されていない。にもかかわらず、大統領は今回、「麻薬犯罪撲滅戦争」を命じ、この戦争の「指揮官」を自ら務めるという。指揮官就任は大統領府麻薬取締局(PDEA)と司法省がその任務を遂行できておらず、機能不全状態に陥っていることを認めたようなもの。

 とはいえ、大統領が同指揮官に就任しても、汚職が政府内にまん延している現状では、司法制度の適正実施、麻薬事犯の取り締まりは「絵に描いた餅」。大統領は今回の「戦争」に敗れた場合、責任がすべて自分に降りかかることを承知しているのだろうか。

 下院での麻薬問題聴聞会もひどかった。PDEAは違法捜査の可能性を自ら暴露。メディアの「寵児(ちょうじ)」となったPDEA捜査隊長は現役軍人だったことも判明した。軍人は国軍内以外でのポストには就けないはずなのにだ。

 翻って、司法省に問題なしかと言えば、答えは「否」だ。同省内にも汚職がまん延しているからだ。大統領は指揮官就任に当たり、取り締まり強化、法の執行などを強調したが、これらは当たり前のこと。何の新味もない。

 こうした発言はメディア受けを狙ったもので、大統領は心の中で今回の問題が「数週間もすれば忘れ去られる」と高をくくっているのだ。(15日・トリビューン)

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