新聞論調
コメパニックの代償。一貫性欠く政府の対策
コメ主要輸出国で米価が急落している。ベトナムでは破砕米率五%入りの価格は一トン当たり五百ドルを記録した。フィリピンがコメ不足パニックに陥り買い取りに走った四月は同千八十ドル。米価は半値以下に急落した。しかし、この米価急落が国内で反映されていない。国家食糧庁(NFA)は十分な備蓄米を有し、品質の高いコメが近く市場に出回るという。需要と供給の原則では、米価は下落すべきだが見通しは暗い。NFAが高額で仕入れたため米価を下げることができず、財源もない。
NFAは今年二百三十万トンを輸入契約し、うち百九十万トンを輸入済みだ。備蓄米の大半を輸入米が占め、八月現在の同量は約八十七万トン。昨年同期比では二倍で、民間セクター備蓄米量を上回った。現政権は米価高騰に振り回されて、必要量以上のコメを購入したわけだ。
今年の輸入米平均市場価格は一キロ当たり三三・三七ペソ。輸送などの必要経費を含めれば、NFAの政府米販売価格同一八・二五ペソの二倍以上。アロヨ政権は税金で購入された政府米で「コメ暴動」を回避したが、ツケは国民に転嫁される見通しだ。
ヤップ農務長官は国産米の買い取りを昨年の一%弱から五・八%に大幅に引き上げると言明し、NFAは購入価格を一キロ十七ペソとした。収穫期が始まったばかりだが、NFAが求めるコメの品質基準は高い上、農家は一キロ最低九ペソでの売り渡しを強いられている。民間業者は市場価格の高止まりを利用して利ざやを稼ぎ、農民は相変わらず生活苦に陥る。
現政権は米価格高騰のピーク時、コメ自給国を目指して尽力するとした。だが、農民が公平な利益を受けられない現状では、タイやベトナムの農家を助成するサイクルが続く。(20日・インクワイアラー)