違憲性巡る判断を
和平交渉の覚書合意
もし、比政府とイスラム教徒急進派、モロ・イスラム解放戦線(MILF)がマレーシアで和平交渉の最終主要議題である「父祖伝来の土地」問題に関する覚書に署名していたとしたら、国は憲法改正を実施してでも同覚書の条項をすべて履行することが国際法上求められていた。これが、和平交渉に関する覚書の違憲性をめぐる最高裁大法廷の口頭弁論で、二人の判事が二十九日に明らかにした見解である。
この見解に対して、大統領府関係者は「覚書はもう破棄されたも同然」と述べた。アポストル大統領顧問も「署名に臨んだ政府側代表は十分な権限が与えられていなかった」と述べている。そうであれば、世銀の比事務所代表や各国外交官らを署名式典に招待したのは何だったのか。単なる「やらせ」だったのだろうか?
一方、MILF側はこの覚書が署名を得なくとも既に実質合意を得たものであると主張している。政府側代表は覚書の実施には国土や地方自治体、国策、国軍の役割などに関する憲法条項の改正が必要なことを認めている。
このような覚書の署名が持つ意味について議論が高まる中、政府は現在、この覚書の違憲性に関する申し立て自体をなかったものとしたいようだ。「とにかく今回の覚書は結局、署名されなかったのだから」と。
しかし、合意の違憲性議論が解決しない限り、MILF側は比政府に対し合意事項の実施を求めてくることが考えられる。同合意を最終的に破棄できるのは最高裁判決だけなのだ。昨年、大統領の夫のホセミゲル氏がジャーナリストらに対し四十件近い名誉棄損訴訟を起こした際、同氏の公人要件に関する最高裁の判断がうやむやになった経緯がある。覚書の違憲性をめぐる判断は、同様にうやむやにしてはならない。(30日・スター)