新聞論調
無用の長物
使用されないものは何でも劣化する。マニラ空港第3ターミナルは長い間、利用されずに放置されてきた。コンクリートなどにひび割れが入っているため、構造点検を実施する必要があり、「新空港」と呼ぶにはいささか無理がある。
同ターミナル到着階の天井部分が約二年前に崩落した。水漏れが原因か、基準以下の資材が使われたのか、ネズミが住み着いたのか、原因は分かっていない。
政府は、施工業者が基準以下の資材を使ったのではないかとの疑念を持ち、原因を究明しようとしている。政府の契約事業では不正なコスト減らしが往々にしてあるので正攻法と言ってもいいだろう。しかし、第3ターミナルは未使用期間が長くなるほど老朽化し、開業に必要な修復費用は増大するばかりだ。政府は第1、第2両ターミナルでは乗客数増にとても対応できないのに、開業を先延ばししてきた。
おまけに、建設費用を含めた補償金の訴訟は泥沼化し、最終判決が出るまでに二十年はかかるだろう。政府は、早期開業によってこそ法廷闘争への社会的関心を生み出せるのである。
東南アジアの近隣諸国政府は、利用客の増加に伴う必要からだけではなく、「自慢の種」として新空港を建設している。タイ、マレーシアはシンガポールの超一流、チャンギ空港と肩を並べることを夢見て、近代的な巨大空港を建設した。カンボジアでさえ追随しているのだ。マニラ空港は、世界三大寺院遺跡「アンコールワット」への玄関口であるシェムレアップ国際空港より見劣りする。
この国には「自慢の種」に思い患うぜい沢の余裕はない。汚職疑惑や先の見えない訴訟ばかりではなく、政治的意志すら欠いていて、空港のターミナル一つ開業できない。(13日・スター)