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4月22日のまにら新聞から

サイエンス・セントラム

[ 1552字|2007.4.22|社会 (society)|名所探訪 ]

さまざまな体験学習可能

 発展し続ける自然科学の分野で遅れをとってしまっているフィリピン。将来を担う若い世代に科学・技術の知識や理解を深めさせる比唯一の科学博物館が「フィリピン・サイエンス・セントラム」だ。 

 フィリピン大学ディリマン校や一流私立大学のアテネオ・デ・マニラ大学に近い首都圏マリキナ市マリキナ・リバーバンクにあるが、商業施設の「リバーバンクスモール」に併設されているのがこの国らしい。

 科学博物館を設立・運営している非政府組織(NGO)の比科学技術財団(PFST)が参加型・体験型学習を目指し、双方向性をもつ展示を重視している。リバーバンクス・センターと教育、科学技術両省が協力。総床面積二千五百平方メートルの博物館の中に「光」、「機械」、「電力・磁力」、「数学」、「視覚・概念」、「身体」、「地球」、「液体」、「コンピューターネットワーク」など十の展示コーナーに分かれ、子供から大人まで楽しめる百五十の展示物が設置されている。

 例えば、「地球科学」のコーナーでは、低気圧の仕組みが一目でわかる「サイクロン」がある。ボタンを押すと水蒸気が透明な筒の中に発生、別のボタンを押すと水蒸気が渦を巻いて上昇する。

 「身体」コーナーには平衡感覚を鈍らせる「ワンダーハウス」、「液体」コーナーでは巨大シャボン玉が作れる「リング・バブルズ」、「光」のコーナーには自分の影が壁に残る「フローズン・シャドウ」など、自分で科学の不思議を体験できる仕掛けがふんだんにある。

 科学博物館職員のエディセル・ヘレラさんによると、鏡を使って自分が宙に浮いているように見せることができる「アンタイ・グラビティー・ミラー」の人気が最も高いとか。

 来場者のほとんどは学校の社会科見学者。小学生が四割、幼稚園児が三割、高校二割、大学・専門学校が一割という。

 米国、豪州、アジア各国の自然科学の知識普及担当が集まるアジア太平洋科学技術センターネットワークは昨年、災害対策に関する展示物を作ることを決定したが、フィリピンは科学技術省の主導で、津波のメカニズムを学ぶ展示物を近く設置する方針を決めた。

 科学博物館は年に約五回、地方都市に仮設展示場を設け、三日︱一カ月の展示巡回をしている。昨年は地方会場に約二万五千人が来場した。全国十二カ所には「地域科学博物館」も常設している。

 政府にとって頭痛のタネは、学生や生徒の学力低下。最近の国際調査では、世界三十九カ国を対象とした学力テストで比は数学が三十七位、科学能力が三十八位というひどい結果が出たという。

 このため、科学博物館のパグシノヒン運営課長は「セントラム」を比で最も権威がある学術研究の中心、比大ディリマン校内へ移設したいと考え、資金集めに奔走しているという。同課長は「移転予定地は購入済みだが、不法占拠民が住んでいる。住民の退去・移転のための資金供与、あるいは技術移転支援を世界各国の援助機関に呼び掛けている」と語った。

 科学博物館はそもそも、「科学的意識や教養を高める環境を作ろう」という政府の呼び掛けに応え、PFSTが九〇年に首都圏パサイ市の比文化センター(CCP)内に設立した。九一年、科学博物館の耐震強度が弱いとして取り壊し命令が出たため、比大マニラ校に移された。二〇〇四年に現在のマリキナ・リバーバンクに移った。

 入場料は一般七十五ペソ、学校教師や三歳以下の幼児は無料で、三十人以上の団体は予約が必要。十一︱二月に最も入場者が多く、三︱六月の夏休み期間は客足が途絶えるという。昨年九︱三月の来場者は九万人。ちなみに東京・上野の国立科学博物館の二〇〇六年の入場者数は年間約百七十万人。開館は月︱土曜日の午前八時︱午後五時。問い合わせ先は九四二・五一三六。(一ノ瀬愛)

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