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7月30日のまにら新聞から

名所探訪「リカディワ」

[ 1218字|2006.7.30|社会 (society)|名所探訪 ]

アートな菜食主義カフェ

 フィリピン大学ディリマン校を南に出たケソン市CPガルシア通り沿い、クルスナリガス・バランガイの入り口に菜食主義者向けのオープンカフェがある。店名は「創造精神」を意味する「リカディワ」。野菜の摂取量が低く、日本人の二〇%程度とされるフィリピン人には珍しい存在となっている。

 テーブル数十六の店内に入ると、マレーシアンバイエンスという、しだれ木がカーテンのように垂れている。正面のカウンターには自家製のカラフルなステンドグラスがあり、「店の顔」となっている。

 壁には絵や写真が飾られ、トイレの床や天井には店の女性経営者四人が自ら描いた絵がタイルや石にはめ込まれている。店内の床は毎月塗り替え、壁は毎月、無料で地元の写真家や画家に展示場として提供されている。

 オープンカフェのため昼間は光が店内いっぱいに入り込む。流れるBGMはジャズ。照明の薄暗さ、古びた室内の雰囲気から、さながら日本のクラシック喫茶にいるような気分にしてくれる。

 店の周囲は大衆食堂やトライシクル乗り場があり、変哲のないたたずまい。カフェは、高く大きな樹木で囲われて目立たない。気をつけていないと見過ごしてしまう。

 このように店外が樹木、草花で囲まれているため、道路をけたたましく走るジプニーが生み出す興ざめなエンジン音も耳に入らない。まるで日本に戻ったように静寂だ。

 カフェを経営するのはフィリピン大学で地域開発学の修士号を取得したデル・カスティリオさんら四人の比人女性。全員が芸術に携わっていたため、よく一緒に集まって創作活動に従事していた。

 四人とも料理が得意。何か面白いことができないかと考えた末、カフェを始めようとの話が持ち上がり、一九九九年に開店した。

 カスティリオさんは「野菜ばかりを使った料理を扱うのは経営者の二人が菜食主義だったから」と説明する。でも、ほかの二人が菜食主義でなかったため、魚介類を取り入れたメニューもある。

 メニューには肉料理もあるが、ただし中身は肉を模した豆腐。人気メニューのベジカレー、バーベキュー、バーガーステーキはすべて肉に見せかけた豆腐を使った一品。ほかにも、豆乳や野菜ジュースなど健康志向の食べ物ばかり。

 日本の精進料理を典型とする野菜専門料理がほとんど見られないフィリピンでは貴重なカフェである。店にはフィリピン大学の学生や教授、芸術家がよく集まる。値段もコーヒー一杯四十五ペソから六十五ペソ、食事は七十ペソから百四十五ペソと学生でも気軽に来れる値段設定となっている。

 「夜の雰囲気が一番良い」と話す常連客のセリス・ジーンさん(51)。「私は菜食主義ではない。でも雰囲気が素敵」なためよく足を運ぶという。昼食や夕食時以外は客も少なく静かなため、学生が読書や勉強目的でやって来る。

 店内では菜食主義者向けの食材や自然食品、サプリメントのほか、工芸品も販売している。(一ノ瀬愛)

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