比のハリウッド大通り
ずらりと並ぶ映画の星
昼はビジネス街、夜はデートスポットとなるケソン市リビスの「イーストウッドシティー」。ここには映画の都、ハリウッド大通りの観光名所で、スターたちの名前を刻んだ星型の記念プレート「ウォーク・オブ・フェイム」のフィリピン版がある。
「シティー」中央部のセントラルプラザに沿った歩道に総勢四十五人の映画スターのプレートが埋め込まれている。一九三〇年代以降の比の映画史に名を刻んだ故人となった名優から現役のベテラン俳優、映画界の未来を担う伸び盛りの若手の名前がずらりと並ぶ。
ジョセフ・エストラダ前大統領、その盟友で二〇〇四年の大統領選に出馬した故フェルナンド・ポーやその妻スサン・ロセスの名も見付けた。道行く人々は足元にある俳優の名前を確認しながら、映画談義に盛り上がっていた。
この新名所は昨年十月に除幕された。芸能関係者の非営利団体「映画とテレビのフィリピン人アーティストの会(KAPPI)」会長でコメディアン俳優のジャーマン・モレノ氏らによって発案、制作された。式典にはプレートに名を刻まれた現役の男優、女優も出席、華やかな幕開けとなった。
プロジェクトマネジャーのジーン・バヤナさんによると、選考の基準は五年以上の芸歴、各種映画賞の授賞、出演作の大ヒットなどの功績、映画界への貢献度だった。
「この国には才能あるすばらしい映画俳優が大勢いる。自薦、他薦を問わず、その名声と貢献に対してトロフィー代わりにこのような形で後世に名を残していきたい」と話す。本家ハリウッドの二千人超の記念プレートにははるかに及ばないが、「星(スター)の数を増やしていくと同時に、手形や足型を取ったプレートも作ってみたい」と抱負を語った。
また、歩道に近い建物「シティーウォーク2」四階にある映画館の廊下には、ウォーク・オブ・フェイムに名前を刻んでいる映画俳優の紹介コーナーがある。それぞれの俳優の若かりしころを写したセピア色の肖像写真が展示され、デビューのいきさつや代表作、受賞した映画賞の名前などが記されている。
コーナーの前で洋画の上映時間を待っていた二人連れの女性が、映画スターの昔話に花を咲かせていた。パラニャーケ市在住のヒロミ・エストラダさん(54)はフェルナンド・ポーとスサン・ロセスの写真を指差しながら、「映画界のクィーンとキングの世紀の結婚パレードを見にいけなかったことが今でも残念。まだ十代だったので父に反対されたのよ」とため息交じりに語った。
シャロン・クネタやビルマ・サントス、ノラ・オノール——らすっかり中年となった大物女優たちが二十歳前に撮影した初々しい笑顔。エストラダ前大統領、「喜劇の王様」のドルフィーら老け込んだ男優の若き時分の精かんな表情。いつまでもまぶたに浮かんでくる。(栗田珠希)