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1月30日のまにら新聞から

国家がもたらした悲劇

[ 698字|2006.1.30|社会 (society)|新聞論調 ]

海外就労者問題

 メードとして働き、雇用主のアラブ人を殺害したために、見知らぬ地の拘置所で処刑を待つという悲劇を背負った高校教師がここにいる。マリルー・ロナリオさん(33)は、祖国に二人の子供と夫を残してクウェートでメードとして二年間働いた。比国内で、高校教師としての職がなかったからだ。ロナリオさんは北東ミンダナオ大学で中等教育の学士号を取得した。

 彼女のように、教師から海外で働くメードへと転職するのは珍しくない。香港、シンガポールや中東諸国で同様の話は無数にあり、現在、約八百万人のフィリピン人が国内で本来の仕事がないために海外で働いている。高給を求め、家族を貧困から救うために教師からメードになる話は多い。

 海外就労者(OFW)からの送金額増加で比経済は上向きになっているなどと、政府はOFW問題に関し、明るい部分だけを取り上げたがる。しかし政府は、海外就労に伴う離散家族の社会的犠牲には目を向けない。最愛の妻や夫を置いて海外で働くことは、重い精神的犠牲を強いる。ロナリオさんのように本来なら暴力を否定し、合理的で責任感の強い者が海外で殺人事件を起こすケースが、徐々に増加するかもしれない。

 さらに政府は、医療現場や教育分野を危機に陥れている医師や教師の海外流出問題にも目を背けている。教師不足の学校、医師や看護師が足りず閉鎖する病院が増え続ければ、この国から教育者や医療分野の専門家が姿を消してしまうだろう。混乱した社会に秩序を取り戻し、国民に雇用機会を提供しない限り、ロナリオさんのような悲劇が起きても、国民は緑豊かな牧草地である海外に職を求め、この国を去り続けることになる。(27日・スター)

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