公益と強制収用
NAIA第3ターミナル
マニラ国際空港(NAIA)第3ターミナルの建設計画が持ち上がったのは、ラモス政権下の一九九五年。当初計画では、九八年に開業するはずだったが、エストラダ政権下に計画内容が二回修正されて事業の進行を遅らせた。そして、アロヨ現政権は「事業の契約内容は比政府にとって不利」などとして契約を一方的に破棄した上で、同ターミナルの強制収用に乗り出した。
政府にとって不利で、変則的な部分がある契約は、公益に基づいて破棄されるべきだ。これはドイツなど他の先進各国でも同様だろう。一方で、完成したターミナルの運用を一日も早く始めることも公益に基づいた政府の義務だ。これら公益を優先させた今回の強制収用を国内財界や観光業界はおおむね歓迎している。
問題は、契約破棄にもかかわらず、ターミナル自体はほぼ完成し多額の建設資金が使われたという事実である。ターミナル接収のため、政府は建設・運営事業主体のフィリピン・インターナショナル・エア・ターミナル(PIATCO)などに補償金を支払わなければならない。
今後は、補償金額の設定と財源の確保が焦点となるが、特に重要なのは支払いを「補償」の枠内にとどめることだろう。比政府に不公平な契約を結ばせた国内外の投資家らに不当な利益を与えるようでは、事業契約を破棄したこと自体が無意味になってしまうからだ。
その意味で、補償額を算定するパサイ地裁指名の委員会は、正義に基づいた問題解決能力を示す絶好の機会を得た。一方、比政府は安全かつ迅速にターミナルを開業させ、公益に基づいた義務を果たすべきだ。
(2日・インクワイアラー)