軍出動は愚かな決断
アキノ農園の紛争
アキノ元大統領一族所有のタルラック州のルイシタ大農園の労働者が軍・警察と衝突した事件で、政府は少なくとも死者十四人、多数の負傷者を出す大混乱を招いたとしてストの挑発者や潜入者を非難している。
政府側は、拘束したデモ参加者約百五十人の中に、左派系組織に属するネグロス州在住者など同農園の労働者以外のよそ者や、新人民軍(NPA)メンバーも潜入していたことを明らかにした。だが、政府側の主張についてあえて争う必要はない。装甲兵員輸送車を配備し警官と兵士をスト集会警備に出動させた政府の決定の愚かさは明らかだ。
ルイシタ大農園は大農園システムの不合理さのすべてを象徴している。一九五八年、政府とのコネでタバカレラ社が元大統領の実家コファンコ家に売却した。政府は同家に対し、二十、二十五年後に小作農に原価で土地を与えるという取り決めをして資金を提供した。だが、約束は守られなかった。
また、同大農園は小作農を企業株主にするという協定を取り付け、小作農への土地分配を回避した初の大農園だった。これはアキノ政権下で制定された包括的農地改革法の抜け穴になった。十六年の年月を経て、同大農園はほかの砂糖農園と同じく、高生産費・低生産性の苦境に陥り、「協同組合主義」は悪い冗談となった。ルイシタ大農園は象徴的な存在となり、典型的な強欲非道の大地主とみなされている。
左派は象徴的な闘いのための時と場所を選んだ。政府とコファンコ家は愚かにもそのわなにはまったのだ。政府は死者が出した後も法と秩序を名目に誤りを犯し続けている。(19日・マラヤ)