続く人命軽視体質
ケソン州の国鉄事故
死者六人、重軽傷百五十六人を出したケソン州のフィリピン国鉄(PNR)脱線・転落事故は、五つの問題点を提起している。
一つ目は、交通産業、中でも鉄道事業従事者に特にみられる怠慢だ。この事故の主な原因は運転手の重過失だ。運転手は列車がカーブを曲がり切れないことに気付かず安全速度を超える時速七十キロで走ったのだ。
二つ目は、人命への配慮が少ない国民性が事故につながったという点だ。今回の事故を起こした運転手や国鉄関係者に対する憤慨は世論に反映されず、現に一度目の報道発表以降、事故は忘れられつつある。国民の憤りの欠如や事故の原因追及に対する関心の低さ、乗客の無関心さ、また「事故をすぐに忘れる」国民性が、「事故の責任者を無罪放免する」という慣習を作りあげているのが三つ目の問題点だ。
四つ目は、鉄道の安全システムの欠落だ。線路は窃盗や妨害行為に開放されている。一般市民が列車が走る線路に容易に入り込むことができる。今回の事故でも、レールを固定する金具の一部が盗まれていたことが原因の一つに挙げられている。
五つ目は、輸送インフラと設備における違法行為の軽視、鉄道システムの修復と近代化の必要性である。鉄道は交通産業の中で最もなおざりにされているセクターで、線路の点検・補修もままならない。客車は不衛生で、貨物車両は古すぎてがたがきている。
政府はルソン島北部と首都圏を結ぶ鉄道事業に着手すると発表したばかりだが、この事故を契機に、事故が多発するルソン南部鉄道の修復と近代化を急ぎ、ミンダナオやパナイなどの大きな島に鉄道を敷設すべきだ。(16日・インクワイアラー)