誘拐犯を拘束せよ
イタリア人誘拐事件
ミンダナオ地方中部北ラナオ州で誘拐された非政府組織(NGO)メンバーのイタリア人男性が無事解放され、皆ほっとしている。たった一日拘束されただけの迅速な解決は身代金が支払われたとの憶測を呼んでいるが、国軍はこれを否定し、「身代金要求には応じないのが政府の方針」との建前をあらためて繰り返した。
しかし、政府が誘拐された者のために「宿泊費」名目で身代金を支払ったり、支払いを仲介したことはこれまでに数知れない。二〇〇一年に拉致されたイタリア人神父のケースもそうだった。身代金要求は誘拐犯がイスラム急進派、モロ・イスラム解放戦線(MILF)のメンバーやシンパである時に顕著だ。MILFの資金調達部隊と疑われている誘拐団ペンタゴンが典型的な例といえる。
今回の事件について、MILFは予想通り、関与を否定した。国軍は「首領はMILF司令官の親族の男性」と明かしたが、それだけ。MILFの所属を証明するメンバーカードがあるわけでなく、メンバーとシンパを識別するのが難しいのは確か。だが、MILFがイタリア人男性の解放を助けたとする政府の公式発表に「自分が誘拐したのだから解放が容易なのは当然」と見る向きもある。
このような憶測を追い払うために一番良いのは誘拐犯を逮捕することだ。人質が解放されたからといって満足していてはダメ。誘拐犯に誘拐が割に合わないことを教える必要がある。すぐに解決したとはいえ、事件のおかげでわが国に対する渡航延期勧告が更新され、投資もさらに停滞することが予想される。誘拐犯やその背後にいる者たちは必ず罰せられなければいけない。(11日・スター)