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6月7日のまにら新聞から

テレビ選挙の成功者

[ 692字|2004.6.7|社会 (society)|新聞論調 ]

上院選の「費用対効果」

 今回の上院選を通して、テレビが費用対効果の高い全国区選挙用メディアとして機能することをあらためて思い知らされた。各地の市場などで有権者と直接向き合うことが最善の選挙運動であることは言うまでもない。しかし、七千以上の島々を訪れることは時間・物理的に不可能。そこで、全国規模の選挙を戦う候補者はテレビなどマスメディアを使った選挙運動を展開した。

 トップ当選したロハス前貿易産業長官は、テレビを最も上手に活用した一人。選挙用コマーシャルでは、ヒット曲のメロディーに乗せて「ミスター・パレンケ(ミスター市場)」という親しみやすいキャッチフレーズを連呼して支持層を広げた。

 野党連合のマドリガル元大統領補佐官は、前回上院選でタレント候補に惨敗した教訓を生かした。「勝てない敵がいたら、その敵を取り込め」とばかりに、遊説先に有名女優らを同行させて雪辱を果たした。

 故カエタノ上院議員の娘、ピア・カエタノ弁護士も、「ピア、ピア、ピア・カエタノ」と連呼する選挙用テーマソングを連日放送。「ピア」という投票用紙に書きやすい名前を有権者の頭に刷り込むことに成功した。

 テレビのコマーシャル放映料は決して安くない。プライムタイムは二十三万ペソ(三十秒)。それ以外の時間帯でも五万三千︱十四万五千ペソ(同)かかる。

 金のかかる選挙運動は、富裕層出身者しか選挙に勝てないことを意味する。しかし、貧困層出身者にも上院議員や正副大統領にふさわしい人物は大勢いる。金持ちによる「エリート民主主義」を放置するのではなく、金がなくても選挙を戦えるような、フェアな枠組み構築が必要だ。(1日・インクワイアラー)

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