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12月15日のまにら新聞から

マリキナ市役所

[ 1114字|2002.12.15|社会 (society)|名所探訪 ]

ガラス張りで怠け者追放

 首都圏東部に位置するマリキナ市は「靴の町」として知られる。人口は約四十万人。一九九六年に市に昇格し、急速に拡大を続けている。インフラの整備度や自治体の対応力で高い評価を得ており、貿易産業省は首都圏で最も競争力のある都市とした。アロヨ大統領は「この活力を首都圏全域に」とバヤニ・フェルナンド前市長を首都圏開発局局長に抜てきしたほどだ。

 面積は二千百五十ヘクタールで、首都圏十七市町中九番目。マリキナ市役所は市のほぼ中央部、目抜き通りに面している。庁舎内に足を踏み入れると思わず目を見張った。約八百五十平方メートルの二階建ての建物内には磨き上げた茶色のタイルが敷き詰められている。各種手続きのための待合室には大型テレビ、自動発券機が備えられ、電光掲示板に表示された番号で整然と呼び出される。

 市議会議事堂を含め約三十ある部屋はいずれも総ガラス張り、真新しいコンピューターに向かっている職員の姿が見える。先進国ならともかく、フィリピンの公官庁でこの設備と清潔度はすごい。

 市役所広報課のアイリーン・デグスマンさん(28)によると、同市役所は二〇〇〇年の改装工事で一新された。一九五〇年代に建設された庁舎は老朽化が著しく、当時のフェルナンド市長が改装を命じた。

 改装に当たり、日の出が見える東側が縁起がいいという中国の風習に習い、これまで裏口だった東側入り口を正面入り口に。それまでの正面玄関、西側入り口が裏口となった。

 ガラス張りにした理由は「怠け者職員追放」のため。フィリピンの市役所では勤務中にタブロイド紙を読みふけり、同僚とのんびりと談笑、果ては居眠りする職員の姿を見かけることは日常茶飯事。

 だが、ここでは「ぼーっとしていると突然目の前に市長が現れる」ため、職員の仕事への姿勢が変わったという。実際に回廊を歩くと、誰が働いていて誰が働いていないか一目瞭然だ。

 現在、市当局は「マリキナ市をシンガポール並みの清潔な都市に」を合言葉に、六キロメートルに及ぶ洪水対策用の堤防建設や道路整備に力を入れている。さらに、安価な中国製品に押され衰退しつつある靴産業のため、「マリキナ靴デザイン事業所」を設置。最新のデザイン、製造技術のセミナーなどを開き、靴産業活性化を支援している。

 気になったのは市役所の内装。「仲良く、幸せなコミュニティー・BF」など、前市長の愛称BFとコメントが側壁などに刻まれている。

 また、九三年│〇一年まで市長を務めたフェルナンド氏の後任は妻のマリアロルデス・フェルナンドさん。フィリピンでは自治体首長の座が一族で私物化されることが珍しくないが、ここでもその典型を見た思いがした。(阿部隼人)

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