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12月8日のまにら新聞から

キアポの占い屋

[ 1115字|2002.12.8|社会 (society)|名所探訪 ]

次期大統領はまた俳優?

 黒い顔のキリスト像、ブラックナザレで有名なマニラ市のキアポ教会。教会西側にあるエバンヘリスタ通りに入ると、クリーム色の柱、コバルトブルーの天井ガラスで飾られたアーケードが現れる。その下に占い師がずらりと並んでいる。忙しそうに行き交う人波の中、タロットカードをはさんだ占い師と客の表情は真剣そのものだ。

 占い師は総勢約九十人。「首都圏で占ってもらうならキアポへ」と言われるゆえんである。だが、今や「供給過多」となり、解消策として午前六時︱午後三時、午後三時︱午後九時という二シフト制が導入されている。二年前からは新規参入者を閉め出した。

 占い屋にはプラスチック製のいすが置かれているだけ。客が来れば、占い内容をPRした小さな看板をひざの上に置いて机代わりにする。客待ちの間、日よけにパラソルや雨傘をさしている占い師も目立つ。

 ここでの占いは手相とタロット、トランプカードが主流だ。値段は占い一種類で五十ペソ、三種全部で百ペソで、「外国人料金」を取られることもない。占い師のほとんどは女性で、やたらとアクセサリーを身に付けている人が多い。

 キアポで一番の古株というマダム・シィリンさん(66)は一九六七年に開業した。霊感を保つため、キアポ教会での礼拝は毎朝欠かさない。常連客の中には中華系フィリピン人も多く、恋愛や家族の問題、将来の生活やビジネスの展望についてなど内容は多岐にわたっている。

 「運勢みてあげる。こっち、こっち」と呼び掛けられて、緊張しながら腰掛けた。タロットカードを一枚一枚開けながら、早口で客の過去と現在を次々に言い当てていく姿に圧倒された。「いままであまりいい恋愛はしなかったでしょう」という言葉にドキリ。しかし、「三十歳までには運命の人とめぐり会って幸せな結婚ができるわよ」と自信たっぷりに言われ、胸をなで下ろした。

 百二歳で亡くなった祖母から占い方を伝授してもらったというマーリンさん(41)は母と姉、おばもキアポで占い師をやっている。次の大統領選を占ってもらうと、「不正がない限り、(エストラダ前大統領の親友で人気俳優の)フェルナンド・ポー・ジュニアが当選よ」と断言した。マーリンさんは前大統領を今も支持。うさんくささも感じるが、うそか本当かは二年後のお楽しみとしよう。

 マニラ市は、「ブハイイン・マイニラ(マニラを復活させよう)」をスローガンに町の美化や観光名所の施設改善に力を入れている。名の知れたキアポ教会周辺も例外ではない。占い師によると、アティエンサ市長は「キアポの占い屋をマニラ観光の目玉の一つに」と考えており、来年にも「占いの館」が建設される計画だ。(栗田珠希)

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