ハロハロ
一九九四年十二月に大麻所持罪で死刑判決を受けた鈴木英司被告(46)=最高裁で審理中=のことがずっと胸に引っ掛かっている。初めて会ったのは逮捕直後の同年五月。孤立無援の中で無実を訴えていた。当時、領事業務に関する連載を予定していた経緯から「邦人保護がいかにいい加減か」を指摘する材料として取材した。
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死刑判決に至ってしまったのは、マスコミが騒いで「出るところに出た」ためではないか、と思っている。鈴木被告をワナにはめたとされる捜査責任者らを追いかけなければ「示談金」を払って終わっていたかも、とも思う。殺人容疑者でさえ訴追を免れている現状を知れば知るほど、その思いは強まるばかりだ。
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数日前、刑務所から鈴木被告の手紙が届いた。「父親が吐血した。死期が近い」と言う。「何一つ結果を出せず、お金と父の人生を食いつぶしてしまった」とも。一審判決から十二月七日でちょうど八年。最高裁審理を待つ間に、鈴木被告と七十四歳のお父さん、そして私も同じだけ年を重ねてしまった。(酒)