ハロハロ
「一日二十分、自宅でビジネス」とうたった新聞広告が出始めたのは確か二〇〇一年一月ごろだった。広告は背広姿で微笑を浮かべる日本人男性の写真入り。「これはヤバイかも」と知人の比人に密偵会員になってもらった。投資金は四千ペソ。「もしかしたら大金持ちに」というよこしまな考えも少なからずあった。
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男性の正体は、肖像入り巨大看板で一時「比で一番顔の知れた日本人」だった大神源太容疑者=詐欺容疑で逮捕。出資金三百億円のうち二十億円を私的に流用したとされ、比人妻には一億円以上を仕送りしていた。結局、金持ちになりたいという庶民の夢を吸って夢を実現したのは大神容疑者ら一握りの幹部だけだった。
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「フツーの日本人。マニラに来れば王様」という。数十万円もあれば小金持ち気分という意味だ。貨幣価値の差を利用しているにすぎないのだが、禁断の甘味を忘れられず本末転倒の勘違いに陥る人は少なくない。「四千ペソ返せ」などとは決して叫ばず、大神容疑者ならぬ「裸の王様」にならないよう自戒したい。(酒)