ハロハロ
「日本人の尺度に照らし合わせて、フィリピン人の社会規範や生活習慣をあれこれ言うのはよそう」。マニラ暮らしを始めて五年。その間、こんなことを自分に言い聞かせ、他人にも話してきた。しかし、「プラス、マイナスすると、少なくとも社会規範は日本が優れている」。筆者の心のどこかにそんな思いが潜んでいたのは否めない。
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ところがである。牛肉偽装事件、医療ミスでの死亡事故を隠すための診療記録改ざん、不良債権隠し、原発点検データの改ざんとトラブル隠し、事業での不正入札と外国高官買収事件……。優れていると思っていた社会規範が音を立てて崩れる出来事が日本で相次いだ。それも各業界のトップ企業や病院。国民を裏切った道義的責任は大きい。不正を犯さないと企業が生き残れない日本になったとは信じたくない。
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一度落とした信頼を取り戻すには大変な努力がいる。太平洋戦争で日本軍が残した傷跡がまだ、この国でうずいているのを見ても分かる。戦前、親日派のフィリピン人が少なくなかったと聞く。「フェアな国であってほしい」。祖国に声援を送ると同時に、一人ひとりの在留邦人が、フィリピンの人たちに信頼される日本人でありたい。(濱)