自ら招く災い
ごみ投棄、洪水問題
一昔前、ごみ捨て行為に警鐘を鳴らす意識啓発コマーシャルが放送された。登場人物は自宅近くの水路にごみを捨てる家族。大洪水で水路の水が逆流し、捨てられたごみが家へ「里帰り」する様が描かれた。
首都圏住民が排出するごみは一日八千トン。このうち業者に回収されるごみはわずか四割。残り六割は道路などに不法投棄され水路を詰まらせる。首都圏には海抜ゼロメートル地帯が少なくなく、洪水防止には雨水を海へスムーズに逃がすことが大切だ。しかし、排水路はごみやヘドロで機能不全に陥り、洪水は雨が上がった後も数日間続く。
ごみ投棄と洪水は、疫病発生というさらなる悪循環を生む。「悪行は災難となって自分たちに降りかかる」というコマーシャルの教訓は、首都圏住民のためにあるのだ。住民は、自分たちがごみと洪水という「双子の問題」を産み続けていることを悟らなければならない。
首都圏開発局のフェルナンド局長は、マリキナ市長時代の経験を生かして、ごみ、洪水の徹底対策に乗り出そうとしている。水路にごみを投棄した住民の逮捕、水路沿いの違法占拠住民排除も辞さない構えだ。
局長のき然とした決断と創意に満ちた手法に期待すると同時に、以下の水路ごみ対策を提案したい。
一点目は不法投棄者を刑務所に入れる代わりに水路掃除に従事させること。バランガイ(最小行政区)関係者に水路の管理責任を負わせることに加え、ごみ置き場を地区ごとに設置すること、水路にたまったヘドロの除去も重要だ。
水路詰まりの主な原因になっているビニール、発泡スチロール類は自然界で分解されない。清掃などの「対症療法」とともに、ビニール類の使用抑制といった産業界の協力も不可欠だろう。 (7月28日・タイムズ)