暴力事件と民主主義
バランガイ役員選挙
最近の世論調査で、フィリピン人は自国の民主主義体制についてますます幻滅しているという結果が出たが、十五日に行われた全国バランガイ役員選挙での首都圏住民の投票率の低さは、それを反映しているようにみえるかもしれない。
中央選挙管理委員会によると、今回の首都圏の投票率はわずか四〇%だった。ところが、昨年五月に行われた国政選挙については、全国の平均投票率は八五%と発表されている。この二つの数字を比較して、フィリピン人の大多数は民主主義とそのプロセスに対し絶望していると単純に結論づけることが果たしてできるだろうか?
まず、首都圏は選挙前の十日間ほど豪雨に見舞われ、各地で洪水が発生、大きな被害を受けた。住民らは、自治会政治より豪雨被害の後片付けに従事する必要があったのだ。
また、バランガイ役員が住民の生活に重要な役割を担っていると言われても、有権者たちは、市長や国会議員、大統領を選ぶ国政選挙の方により大きな達成感を覚えるものだ。
さらに、首都圏の政治離れはそのまま全土に適用はできない。ビサヤ地域の有権者たちが各地で投票所に押し掛けていたように、全国レベルでは、今回の投票率もこれまでのものに匹敵する高さになるだろう。
先日の選挙では、投票者を千ペソの値段で買収する立候補者がキアポ地区で確認されたり、全国で八十二人が選挙関連の暴力事件で死亡しているが、これは過去の選挙と同じだ。こんなに死者が出ている事態にも政府は「比較的平穏だった」と評しているが、選挙に絡む暴力事件は一向に減らないのが現状だ。この辺に民主主義に幻滅する国民が増えている理由があるのかもしれない。(17日・インクワイアラー)