ハロハロ
中国の警察官が日本総領事館の敷地内へ侵入し、亡命者を連行するという前代未聞の事件が起きた。覚えておられる読者も多いと思うが、昨年八月、マニラでも同種の事件があった。首都圏警察パサイ署の警官隊が在比日本大使館の敷地内へ押し入り、日本人男性三人ら約二十五人の身柄を拘束し、署へ連行したのだ。
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中国の事件で、日本メディアは「亡命者を見殺しにした領事館」という世論感情に乗った報道を続けている。「見殺し」という意味では、マニラの邦人三人もそうだった。大使館警備員は警官隊を止めもせず、パサイ署には同館から事実確認の電話が入っただけ。比側への正式抗議は事件発生から丸二日後だった。
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邦人三人は比移住組の翻訳業者でいわゆる企業駐在員ではない。記事に「もし……」はタブーだが、三人が駐在員や北朝鮮国籍だったら大使館はどのように対応しただろうか、と思う。そういえば、比人の母と比へ帰国した日比二重国籍の少年(6歳)が殺された事件でも遺体確認の場に大使館員の姿はなかった。(酒)